Classici giapponesi con furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Leggi 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) di 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 240.656 caratteri · 478 schermate
いや、事がそう決まらば急がねばならぬ。御老体、先ず事は半成就したも同然じゃ。御支度さッしゃい」
健気な菊路の旅姿を先にして、主水之介、京弥、老神主三人がこれを守りながら、目ざす大和田十郎次の屋敷へ行き向ったのが丁度暮れ六ツ。
元より門はぴたりと締って、そこはかとなくぬば玉の濃い闇がつづき、空も風も何とはのう不気味です。
だが菊路は、涙ぐましい位にも今健気でした。つかつかと門の外へ歩みよると、ほとほと扉を叩いて中なる門番に呼びかけました。
「あの、物申します。わたくし、旅に行き暮れた女子でござります。宿を取りはぐれまして難渋ひと方ではござりませぬ。今宵いち夜、お廂の下なとお貸し願えぬでござりましょうか、お願いでござります」
「なに、女子でござりますとな。待たッしゃい、待たッしゃい。宿を取りはぐれた女子とあっては耳よりじゃ。どれどれ、どんなお方でござります」
ギイとくぐりをあけて、しきりにためつすかしつ、差しのぞいていたが、菊路ほどの深窓珠をあざむく匂やかな風情が物を言わないという筈はない。にたりと笑って、忠義するはこの時とばかり、屋敷の奥へ注進に駈け込んでいったその隙を狙いながら、退屈男達三人はすばやく身をかくしつつ、邸内深くの繁みの中に忍び入りました。