Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Leggi 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) di 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 240.656 caratteri · 478 schermate

Aozora Bunko

開かれると、ひょっこりいち人の旅僧が黒い影を地に曳きながら立ち現れました。

「馬鹿者。やったな」

素早く認めて、退屈男がずかずかと歩みよったかと見えましたが、ぬうっとその前に立塞がると、むしろ気味のわるい太い声で呼びかけました。

「こりゃ、そこの御坊!」

ふりかえったのをその途端――

「十吉ッ、化け方がまずいぞッ」

言いざま片手でそのあじろ笠を押え、残る片手でおのが黒覆面をばらりはぎとると、折からさしのぼった月光の下にさッとあの凄艶きわまりない面をさらしながら、威嚇するように言いました。

「この顔をみい! そちが一番怖い長割下水の旗本退屈男じゃ」

「げえッ」

おどろいたもののごとく身をすりぬけようとしたのを、押えてぐいと対手の頤を引きよせながらさしのぞくと――見えました。確かに月の光りでありありと見届けられたものは、あの目印の頤の疵です。

「額の疵と、頤の疵と、珍しい対面じゃの。もう文句はあるまい。じたばたせずと、権之兵衛に手柄をさせてつかわせい」

けれども、十吉は必死でした。渾身の勇を奮って、その手をすりぬけながら、やにわとまた逃げのびようとしたので、大きくひと足退屈男の身体があとを追ったかと見えた刹那――