Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

Leggi 春いくたび (はるいくたび) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 70.094 caratteri · 142 schermate

Aozora Bunko

三

「あのう……でもほんとうに」

「だまれ、お前は土生一族の者だろう、そして我々の様子をさぐるために、わざとしばられてここに残っていたのだろう、――隊長」

吉次郎は大剣の柄へ手をかけた。

「よくある手です。斬ってしまいましょう」

「――待て」半九郎は静かにおさえた。

「貴公がそう思うのは尤もだ、しかしよくしらべないで斬るという法はない」

「でも万一これが密偵だとしたら」

「まあ待て、我々は一人や二人の密偵を恐れる必要はない、それにたかが少女のことだ、この少女のことはおれにまかせてくれ」

半九郎はやさしく、

「――お糸さん」と少女の方へいった。

「心配しなくともいいんだよ、私はおまえを信じている、父さんのこともしらべてあげようし、また酒田へも帰れるようにしてあげる、安心しておいで」

「はい、……ありがとう存じます」

少女は涙のあふれた眼で半九郎を見上げながらほほえんだ。――白い美しい歯がちらと唇のあいだからのぞくのを石岡吉次郎は、さもいまいましそうににらみつけていた。

三

その夜はなにごともなく明けた。

朝の全員点呼がすみ、食事が終るとすぐ、半九郎は羽黒山の東をぬける山道へ斥候をだした。