Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

Leggi 春いくたび (はるいくたび) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 70.094 caratteri · 142 schermate

Aozora Bunko

一の二

「今日はいいお日和でございます」

「よく晴れたね」

「御道中もこれならお楽でございましょう。ただ今お茶をいれまする、――五郎さん遠くまでお供かえ」

娘はまめまめしく茶釜の前で働きながら少年のほうへ笑顔を向けた。

「ああ岩崎までお送り申すんだよ」

「おやそう、では湯沢を通ったら帰りにまた蕗餅を買って来ておくれな、父さまの好物が切れて困っていたところなの」

「いいとも、買ってきてあげるよ」

このとき茶店の裏を、すんだ声で叫びながら一羽の鳥が飛び過ぎた、――旅人がおやという眼つきでふり返ると、娘は茶を運んできながら、

「郭公でございます」

といった。

一の二

五郎吉の曳いた馬が、峠を下りて見えなくなるまで見送っていたおゆきは、

「――おゆき、おゆき」

と呼ぶ声に気づいて、

「はい、ただ今」

あわてて茶盆を手にしながら中へ入った。――奥はふた間の、粗末ながら掃除のいきとどいた居間で、父の久右衛門は床の上に半身を起し、碁盤を脇へ置いてひとり石をならべていたが、娘がくるとあらぬほうを見ながら、

「いまのお客は上りかな」

「いえ岩崎へお下りですって、三十ぐらいのお商人ふうのかたでしたわ」