Classici giapponesi con furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Leggi 春いくたび (はるいくたび) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 70.094 caratteri · 142 schermate
頭分らしい一人が叫ぶと、残った者たちはさっと闇の中へ逃散って行った。――三樹八郎はそれでも油断せず、しばらく四辺のようすを窺っていたが、もう不意討ちを掛ける者もなしと見届けたので、
「もうようござろう」
と振返る。と、若侍はそこに倒れて失神していた、――抱起してみると、左の肩口を強か斬られている、しかし多少出血がひどいというだけで致命傷ではない。
――気の緩みで失神したな。
三樹八郎は剣を納めると、若侍を抱上げて浪宅のほうへ戻った。――門口に、燈を差つけながら震えていた加代は、
「お兄さま、お怪我は……?」
「おれは大丈夫だが、この人が傷をしている、手当をするから湯を沸かしてくれ」
「はい」
「それから清潔な布と、巻木綿があったはずだな、それから金瘡薬を」
「はい」
三樹八郎は若侍を座敷へ運んで、加代に手伝わせながら手負いの着物を引裂いて傷を検め、沸かした温湯で拭いはじめた。――その痛みで気付いたのだろう。
「――うっ」
低く呻いて眼を明いた若侍は、
「おう、は、春枝……春枝」
と苦しげに叫んで起上ろうとする。
「動いてはいかん、静かに」
「春枝を、ああ、春枝が斬られる、早く、早く助けて、妹を――妹を……」