Classici giapponesi con furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Leggi 春いくたび (はるいくたび) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 70.094 caratteri · 142 schermate
五
そして暫くすると静かに首を振って云った。
「御尼僧。……あなたも、誰かを待っておいでなのだな」
「…………」
「出来ることなら私は、その人だと云ってあげたい、けれど。……私にも捜している者がいるのだ、あなたが待っているように、私にも私を待っていて呉れる者がある。……私は大野将軍の副官として些かの働きをした功で、将軍の家に引取られていた、そこにいれば安穏な生涯が送れた。……けれど私は、そこを出て来たのです、私を待っていて呉れる人に会いたいと思ったからです」
月心尼は老人の言葉を夢のように聞いていた。……聞きながら老人の顔を食い入るように見戍った、どこかに信之助の俤がありはしないかと思ったのである。……けれど、別れて以来殆んど四十年になる今では、そして多くの辛酸に揉まれて、遥かに青春から遠ざかっている今では、たとい其人としても直ぐ見分けのつく筈はあるまい。……月心尼の胸は新しい失望に刺されるような痛みを感じた。……老人は間もなく横になった。
五
その夜、草庵へ帰った彼女は、東京の大野将軍に宛てて手紙を書いた。
松本吉雄という人に就いての問合わせである、書いてしまってから、彼女はそれを出そうか出すまいかに迷った。