Classici giapponesi con furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Leggi 春いくたび (はるいくたび) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 70.094 caratteri · 142 schermate
二
そして、しばらくその少年の顔をにらみつけていたが、やがて侍大将の家の方へ走っていった。
二
「若菜……おまえどうかしたのかえ」
夕飯の膳に向かいながら箸もとらずにいる娘のようすを見て、母親は心配そうにたずねた。
「――お母さま」
若菜は涙のたまった眼をあげた。
「わたくし今日、いやなうわさをききましたの」
「なにをきいたの?」
「お兄さまのことなんです」
母親は少しあわてて眼をふせたようだった。若菜はそれを見のがさなかった。
「お母さまもごぞんじなんですのね」
「――おまえ、……」
「お兄さまが敵軍へねがえりをうったので、釜伏山の陣地をせめとられたということ、お母さまはもうごぞんじだったんですのね」
「――知っていました」
母親はかなしげに眼をふせた。
「知ってはいたけれど、そんなうわさをとりあげておまえを心配させてはわるいと思って」
「いいえうわさではありません、わたくし玄蕃様のお家へ行ってきいてまいりました、裏切者とまではおっしゃいませんでしたけれど、お兄さまがいま敵軍のなかではたらいていることはほんとうだといいました、釜伏山の陣地を敵にとられたのもほんとうだとおっしゃいましたわ」