Classici giapponesi con furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Leggi 春いくたび (はるいくたび) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 70.094 caratteri · 142 schermate
……春とはいえ夜に入ると寒気はきびしく、枯草や道の石塊にむすんだ霜が、月を浴びてきらきらと光っていた。
おゆき茶屋のほうから猫のように足音を忍ばせて、黒い人影が峠路の折口にある大岩の陰へもどって来た。……そこには覆面の武士が三人かたまっていた。
「どうだ、あやしいようすはないか」
「何もない、――娘は居間で糸車を廻しながら、例の手毬唄を唄っている」
「ではほんとうに渡部氏の来るのを待っているのかな」
「そうとすれば」
と一人が身ぶるいしながらいった、「こうやって霜に打たれて見張をする必要はないぞ」
「いや、万一ということがある」
「そうだとも、渡部氏のもどって来るまでは油断してはならぬ」
そういって彼等は岩陰へ身を寄せた。
その時、――彼等のいるところから二、三十歩はなれた枯草の中を、するすると峠路の下のほうへ動いて行く影があった。身の丈に近い笹藪と雑草の中を、鼬のようにす早くぬけて行くと、ひと曲り曲った峠路の上へひょいと姿を現した、……それは五郎吉馬子であった。
五郎吉は道傍の杉の木につないである馬に近寄って、平首をたたきながらひくく、
「おい兄弟、どうもへんだと思ったら、おゆきさんをねらってるやつがあるんだ、おいらはちょっと知らせに行くから、おめえここで待っててくんな、いいか、さびしくっても声を立てるんじゃねえぞ