Classici giapponesi con furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Leggi 蓼喰う虫 (たでくうむし) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 110.066 caratteri · 216 schermate
たのである。彼が初めて妻の素振りに気が付いたのは、それから一年近くも過ぎてからだった。或る晩彼は、額の上まで夜着をかぶって寝ている妻が、かすかにすすり泣くのをきくと、長いことそのすすり泣きを耳にしながら明りの消えた寝室の闇を視つめていた。妻が夜中に嗚咽の声を漏らすことは、それまでにも例がなかった訳ではない。結婚してから一二年の後、次第に性的に彼女を捨てかけていた当座、かれはしばしば女心の遣る瀬なさを訴えているこの声に脅かされた。そうして声の意味が分れば分るほど、可哀そうだと思えば思うほど、なおさら自分と妻との距離の遠ざかるのが感ぜられ、慰める言葉もないままに黙ってそれを聞きすごしたものであった。彼はこれから生涯のあいだ、何年となく夜な夜なこの声に脅かされることを思うと、もうそれだけでも独り身になりたかったのであるが、いいあんばいに妻は段々あきらめてしまって、それから数年来と云うものはついぞ聞かずに済んでいたのにそれをその晩は久しぶりで聞いたのである。彼は最初は自分の耳を疑い、次には妻の心を訝しんだ。今更になって何を彼女は訴えようとするのであろう。