Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate
右手がソロソロと助広の柄にかかり、両眼は、おそろしい殺気をふくんで、お綱の白い襟あしをハッタと睨める。
そぼろ助広へ気合がかかれば、お綱の胴か細首かは、ただ一閃に両断される。
あやういかな、いつものお綱であれば、草一本のそよぎにでも、敏くなければならない筈だが、今はまったく、一節切の音色にしんから聞き惚れていて、心は時雨堂の、あの虚無僧のまぼろしへ凭れている。
現なだけに、無心なだけに――お綱の姿態も、常より増して媚めかしい。鬢の垂るるままに、うつむいている、頸すじの匂わしさ、肩から足へと、流れている柔らかい線の情味、蛍草に押されて、むッちりとした乳のあたり……。その妖冶な漂いが、いっそうお十夜の鬱憤をムカつかせて、所詮、ただ魔刀の酬いだけではあきたらない気もちと変った。そして、そのためらいの間に、孫兵衛の殺念は、さかんな獣心と代り、眸はトロトロとお綱の姿態に焦きついていった。
うぬ。おぼえていろよ。
男のおそろしいことをしらしてやる。
その色香をかきむしッてやる。
そして因果な身にしてやるのだ。終生つきまとい、呪いまわして、泣きの涙で送るようにしてくれる。