Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate
月夜の風邪
と、その後ろから一ツの笠が風に舞わされてクルクルッとお綱の足へ吹きよせてきた。
「アアア――」と追いかけてくる旅人があった。べんけい縞の単衣に紺脚絆、笠を抑えたらしい時、お綱はちょッと振り返って、何だか見たような男と思ったが、雨と風に吹き別れて、街道筋の旅人もみな散り散りに影を潜めてしまった。
お綱とお十夜は、追分端れの静かな旅籠へおちついた。雨樋を溢れるドシャ降りと、青光りの稲妻に障子をしめて、お綱はグッスリ枕についた……、閾一重の隣には、宵に、お綱の媚めいた酌に酔った孫兵衛が、これもグーッと寝ついている。
だが、心から寝ついているかどうか? ……。
お綱も真から帯紐をといて、寝こんでいるかどうか? ……。とにかく、目にみえないあるものが、仄暗い灯にまたたかれている二ツの枕を通っている。
そら寝のかけひき、どうなるか?
月夜の風邪
そのあした。
雨はやんだが曇りもよう。湖水の色や、比叡の雲の行きかいを見るに、もう一降りドッとこなければ、この天候は霽れあがるまい、というので、旅籠の門には、だいぶ逗留延ばしのはきものが見える。
「おい、誰かいねえのか、ごめんよ――」