Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate
ええ、じれッてえ! と足もとの、石を拾って叩き破り、さらに窓格子を五、六本、バラバラッと打ちこわす。
指をかけると、万吉の体は、ヒラリと家の中へ、躍り込んでいった。
と――どうしたか、
「あア――!」
と、口を抑えて、畳へ顔をうッ伏せた。
煙――煙――煙――目もあけない黒煙だ。
思わず、太い息を吸ったので、涙をこぼしてむせかえッた。
いよいよ、火はこの屋敷の、どこかしらに籠ってるときまった。風を入れては、一煽りに燃えぬける惧れがある、と感づいたので、万吉はあとの戸をピンと閉めてしまった。
こうなるとかれの身は、煙蒸しのせいろうの中へ、みずから封じてしまったようなもの。
危険は危険だが、お綱の安否が気づかわれる。それに、お千絵様の消息も知れない今! 火の中へも飛びこむ意気とは、この場合の万吉の覚悟であったろう。
上を向いて息を吸わぬように心がけて、まず、あたりを撫で廻してみると、やわらかい友禅の炬燵ぶとん――温みがある――四、五冊の草双紙――コロコロと湯呑茶碗が手にふれて転がった。
そいつをつかんで、盲滅法、闇の中へ投げつけて、
「お綱ア! ――」
力いッぱい呼んでみた。