Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate

Aozora Bunko

「ご苦労だった」と、周馬が言葉をかけて、

「頼んでやった者は、みんな来るといったろうな」

「ところが旦那――」と、使屋は、この寒いのに汗をふいて、

「お手紙を持って行った賭場先には、どこにも、誰もおりませんです」

「フーム……どうして?」

「なにしろ、旦那、とても、神田一帯は火の海になりそうな騒ぎです。大概のお屋敷は、見舞を出すやら、火事頭巾でくりだすやらで、いくらのんきな部屋でも、今夜ばかりは、人の影もございませんよ」

「なるほど――」いわれてみれば道理であった。

「火事はそんなにひどくなってきたか」

「ひどいのなんのって、高台から焼け拡がったので、八方移りに燃えそうです。こっち側は昌平橋御門から佐柄木町すじ、連雀町から風呂屋町の辺りまで、すっかり火の粉をかぶっています」

「と、すると……」周馬は急に色を変えて、

「火元はどこじゃ、火元は?」

「なんでも、怪し火だという噂ですがね」

「怪し火? フーム……して駿河台の、甲賀組の墨屋敷などは、かけ離れてもいるから、さしたることはあるまいな」

「どう致しまして、旦那、その怪し火てえのが、そもそも墨屋敷の、何とかいう古い家から出たんです」