Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate

Aozora Bunko

大きな雪洞を向けたように、不夜城の空は赤く映えていた。

おはぐろ溝のへりにしゃがんで、お綱は肩をすぼめたまま、子供のようにしばらくすすり泣きに泣いていた。

ここは自分の育った土地で、この溝もこの廓もこの辺の家も、皆昔ながらであるだけに、なんとなく小娘頃の気もちがヒタヒタとよみがえってくる。それがいっそう悲しかった。

「お母さんさえ生きていたら、私はこんな女にもならず、ほかの妹弟たちも、あんな不幸せにはならなかったろうに……」しみじみ思いだされるのである。

親父は廓の遊び人で、紋日の虎という手のつけられないあぶれ者だが、死んだ母だけは、今も温かく甘く涙ぐましく、お綱の胸に残っている。

その母は、お才といって、やはり根は廓者であったけれど、いわゆる仲之町の江戸前芸者で、名妓といわれた女であったそうな。だのに、どうして紋日の虎なんて、箸にも棒にもおえない地廻りと夫婦になったのか――お綱は子供心の頃から、それが不思議に目に映った。

で、ある時、まだ母のお才が生きていた頃、聞いてみたことがある。

「お前、そんなことに気がついているのかい。油断のならない子だね」