Classici giapponesi con furigana
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
Leggi さぶ di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 210.521 caratteri · 415 schermate
「この大あらしで、向う河岸の人間も気が立ってる、そこへいきなり水玉模様の仕着が、船からぞくぞくあがったらどうなる、表向きにはなんの知らせもねえんだぜ」と栄二は云った、「――向う河岸の人間になって考えてみな、松田さんならどう思う」
松田はちょっと黙っていたが、どこかへいって鍬を持って戻り、栄二と並んで溝掘りにかかった。
「おめえはよっぽど」と松田が云った、「ひでえめにあったことがあるんだな」
「おれだけじゃねえさ、この寄場にいる者はみんな、それぞれ世間からひでえめにあわされてるぜ」
「口のへらねえ野郎だ」松田は手を止めて栄二を睨みつけた、「いつでもひとをへこましゃあがる、そんなにおれが嫌えなのか」
栄二はおどろいて松田を見た、「おれが松田さんをへこましたって、冗談じゃあねえ、おらあ初めっからおめえさんが好きなんだぜ」
「ふん」松田は力いっぱい鍬を振りおろした、「おだてとともれえ駕籠にゃあ乗らねえぞ」
押し寄せて来る水は波を打って、掘りあげた溝を越しては役所の前庭を洗い、役所の建物はぶきみにきしんだ。屋根瓦が音をたてて吹き飛ばされ、軒や庇で風が咆えつづけた。