Classici giapponesi con furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Leggi 丹下左膳 (たんげさぜん) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 340.187 caratteri · 666 schermate
夜泣きの刀
夜泣きの刀
しずかに更けてゆく秋の夜。
風が出たらしく、しめきった雨戸に時々カサ! と音がするのは庭の柿の病葉が散りかかるのであろう。その風が隙間を洩れて、行燈の灯をあおるたびに、壁の二つの人影が大入道のようにゆらゆらと揺ぐ――。
江戸は根津権現の裏、俗に曙の里といわれるところに、神変夢想流の町道場を開いている小野塚鉄斎、いま奥の書院に端坐して、抜き放った一刀の刀身にあかず見入っている。霜をとかした流水がそのまま凝ったような、見るだに膚寒い利刃である。刀を持った鉄斎の手がかすかに動くごとに、行燈の映ろいを受けて、鉄斎の顔にちらちらと銀鱗が躍る。すこし離れて墨をすっている娘の弥生は、何がなしに慄然として襟をかきあわせた。
「いつ見ても斬れそうだのう」
ひとりごとのように鉄斎がいう。
「はい」
と答えたつもりだが、弥生の声は口から外へ出なかった。
「年に一度しか取り出すことを許されない刀だが、明日はその日だ――誰が此刀をさすことやら」
鉄斎というよりも刀が口をきいているようだ。が、ちらと娘を見返った鉄斎の老眼は、父親らしい愛撫と、親らしい揶揄の気味とでいつになく優しかった。