Classici giapponesi con furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Leggi 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 203.094 caratteri · 411 schermate
ほかには何んにも聞えない。聞えない。
(おいよは砧の盤にむかいて打ち始める。月また薄暗くなる。おいよはやがて屹と耳をかたむけて、表を見かえる。)
おいよ あ、聞える……。(再び耳を傾けて。)きこえる、聞える……。(槌を置いて立ちかかる。)おお、今夜も聞える……。あれは梟ではない、確にいつもの……狼……狼の声……。(いよいよおびえて。)おお、おお、だんだんに近くなって来る……。(木戸口へ行きて表を窺う。)おお、来た、来た。又わたしを呼び出しに来たのか。(両手で耳をおさえる。)さあ、今が大事の場合……。今夜こそは伴天連さまの教えにしたがって……。神さまのお力に縋って……。
(おいよは慌てて縁にかけ上り、懐中より彼のマリアの像を取出して、行燈の火に照らして見る。)
おいよ (マリアの像を押頂く。)サンタ、マリア……。サンタ、マリア……。(やがて又、表をみかえる。)ええ、まだ聞える。まだ聞える。(今度は無言にて、像を押頂きながら念ず。)まだ聞える……。やっぱり聞える……。わたしの信心が足らないのか。伴天連の教えが詐りか。ええ、聞えないでくれ、聞えないでくれ。ええ、もうどうしたら好いか。