Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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よせ

圓太郎馬車 正岡容寄席小説集

正岡 容

Leggi 圓太郎馬車 正岡容寄席小説集 (よせ) di 正岡 容 (まさおかいるる) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 147.226 caratteri · 295 schermate

Aozora Bunko

暮春の唄

一

今日も気むずかしそうな顔をしていた。

うしろに雷蔵の奴が従いていた。

「ヘイ、承知しました扇歌師匠へ。ヘイ、並木でござんすね」

苦が虫を噛み潰したような師匠の顔を見て今松は、今の今までの悲しみも忘れたように立ち上がった。

すぐ麻裏を突っかけて、

「御免」

そのまま楽屋口から出ようとすると、

「今松、今松」

雷蔵の声が追いかけてきた。

「お艶ちゃんは昨夜きりで廃業したぜ。なにしろ相手は七十親爺だ。本妻たって、しょせん、妾も同然よ。約束だ。明日ァたんと奢ってもらうなあ」

「…………」

勝手にしやがれ。

後を振り向いても見ず今松は、プリプリ腹を立てながら出ていった。

暮春の唄

一

いく日も。

いく日も。

頭をかかえて今松は、考え込んでしまった。ひと晩のうちに、千万両の大身代が灰となり、焼けつくしてしまったような気落ちを感じた。

額といわず、頬といわず、背中といわず、手の先といわず、胸といわず、お腹といわず、膝ッ小僧といわず、踵といわず、身体全体至るところから絶えず冷たい冷たい水の注射でもされているような寂しさを感じずにはいられなかった。

しかも、シュンシュンとその水は、自分の身体中で冷たく漣立てて疼くのだ。