Classici giapponesi con furigana
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よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
Leggi 圓太郎馬車 正岡容寄席小説集 (よせ) di 正岡 容 (まさおかいるる) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 147.226 caratteri · 295 schermate
七
まだ胸の動悸がやまなかった。
なにが養子だい。
なにが年上だい。
酔いもなにも醒め果ててしまって、ガタガタふるえて歩きながら、ひとり腹立たしく口の中で叫んでいた。
養子じゃねえ男妾だい。
年上も年上、年上過ぎらい、あのデクデク婆。
寒さとはまた別に身ぶるいがでてきた。
永生きをすると、いろいろの不思議を見るというが、今日の婆なんか、たしかに横浜七不思議のうちの大真打ってとこだろう。
あの年になって、若い亭主を欲しがるなんざ、これが不思議でなくってなんだろう。
またお屋敷だと雪達磨の子供が言ったところをみると、入れ替わり立ち替わり、替わり合いまして若い男が、ずいぶん御目見得に伺ってるのにちがいない。そうしてみんな、あの大婆ちゃんを一見に及んで兜をぬいで旅順港から総退却ということに相成っているのにちがいない。
当り前だよ、誰があんな婆。
吐き出すように呟いた。
それにしても――。
ふッと我に返って今松は、世にも侘しそうな顔をした。
どうして暮らそうか俺、明日から。
雪の上に、一昨日訪ねて断られた日吉亭のビラ。「松林伯知」の名が真っ赤に濡れて滲んで落ちていた。