Classici giapponesi con furigana
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よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
Leggi 圓太郎馬車 正岡容寄席小説集 (よせ) di 正岡 容 (まさおかいるる) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 147.226 caratteri · 295 schermate
ソッと障子の嵌っている廊下の陰へしゃがんで、うつむいて、息を殺していた。
すさまじい拍手が鳴った。
ハッと顔を上げ、また伏せた。
ピシーリ。
イタについた張扇の音が聞こえた。
「お伽します」
凜とした、張りのある、若々とした声だった。
再び今松は気を呑まれた。
そのとき早くも障子の声は、
「頃はいつなんめり××元年……」
と、いずこ、いかなる戦いであろう、合戦物を読み出していた。
その熱。
その気魄。
そのうまさ。
ピシリピシーリと間を縫って、新戦場を活写していく張扇のものすさまじさよ。
「駄目だ」
てんで勝ち目のない勝負だった。
「旦那永々御厄介になりましたが、とても私はこの上の御厄介には――」
窓越しに見える柳美館の灯の色の中に、ものわかりのいい主人の姿を思い浮かべながら今松は、心で礼を言った。
こんなことなら、あんなにガブガブお酒ばかり飲んじまうんじゃなかったっけ。
つい大勝利の景気のいいのに気が大きくなって、明日は明日の風が吹くとやっつけてしまったが――。
もう懐中には五十銭玉が何枚という心細さだった。
せめてあと五、六日、稼がせてもらえれば、なんとかしがきがつくのだけれど、そのしがきがつくくらいなら別に逃げないでもいいことになる。