Classici giapponesi con furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Leggi 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 267.766 caratteri · 530 schermate
しかるにそういう嘉門の顔が、ここ数ヵ月に変って来た。眼に一抹の怒りが現われ、口に一抹の皮肉味が出て来た。これはどういうしだいなのであろう? 噂によるとある事件から、嘉門は宗家から破門されて、能界から圧迫排斥されて、表だって舞台へ上がることが、できなくなったからだということである。
で、嘉門はこのごろ中は、家にばかり鬱々と引き籠もっていて、朝に昼に晩に飲酒ばかりしていた。
今日も嘉門はただ一人で、取りちらされた盃盤を前に、裏座敷で酒を飲んでいる。
あけ放された障子の向こうは、広い板縁になっていたが、その向こうは荒廃した庭であった。庭好きの嘉門ではあったけれど、このごろでは手入れもしないものと見える。雑草なども伸びていた。庭の奥所に藤棚があって、咲き垂れている藤の花の周囲を、蜜蜂が群れて飛びめぐっていた。小さい築山の裾のあたりに、夏水仙の花が咲き揃っていたが、緑にまじっているがために、琥珀のような色が冴えて見えた。昼の陽が庭に降り注いでいる。で、葉の色も花の色も、活々と明るく健康に見えた、近くに泉水でもあるのであろう、樋から水でも落ちてくるのであろう、トコトコという音が聞こえていた。