Classici giapponesi con furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Leggi 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 267.766 caratteri · 530 schermate
と、そういう優しい悲しい、お粂の心持ちが感ぜられたからでもあろうか、今鈴江は休むようにと、強いてお粂に勧めもしないで、向かい合って黙ってすわっていた。
細めておいた燭台の燈火が、にわかに焔を太くした。で、鈴江のくくれている、逞しいほどの頤のあたりに、ほつれている鬢の毛がテラテラと光り、お粂が膝へ置いている右手の爪を桃色に染め、二人の女に見守られている、紋也の乾いている唇から、洩れて見える前歯を白く浮き立たせた。しかし焔はすぐに細まって、以前よりも部屋の中が暗くなったので、二人の女と一人の武士との、姿が茫とぼけてしまい、焔が太くなった時に一枚の襖の一つの引き手が、妙にキラキラ輝いて見えたが、今は反対に見えなくなった。
二人の女は黙っている。と、その時襖の外から、鈴江を呼ぶ男の声がした。
「鈴江殿、行って参りました。お邸にはこれという異変もなく、代官松の一味の者の、襲ったようすもござりませぬ。しかしいまだに小次郎殿には、ご帰宅されてはおりませぬ……」
五十嵐駒雄の声であった。邸のようすが案じられ、小次郎の身の上も気にかかったので、鈴江が心配して五十嵐駒雄に、雉子町にある自分の邸の、ようすを見てもらいに行ってもらったところ、こういう返辞をもたらせ、駒雄が帰って来たのであった。