Classici giapponesi con furigana
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
Leggi 小出楢重随筆集 (ならしげざっぴつ) di 小出 楢重 (こいでならしげ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 334.351 caratteri · 657 schermate
何んでも、殺される役なんだ。
私は、何か、気味の悪い奴だと思うと同時に、私よりも大分えらい子供かとも思って見た。
宗右衛門町から通って来る娘で、紺地に白ぬきの上リ藤下リ藤の大がらの浴衣を着たのが私を恍惚とさせたものだ。それが悩ましいためか何かよくわからないながらも、何しろ大変気にかかってしようがなかった。今にこの浴衣の模様を忘れない処を見ると、随分心に銘じたものと見える。
記憶といえば妙なもので、小学校、中学校で何か一生懸命に試験勉強したけれども、その辛かった事だけは覚えているが、さて何を記憶しているかと思うと、悉く忘却してしまっている。しかも忘却してどれだけの不便があるかといえば何事もない。何かの必要上、あれは何世紀の出来事だったかを調べるには、簡単に書物は備っている。訳はない。
さて私たちの心にこげついて根を一生にのこす処のものは、日常のくだらぬ事ばかりであるといっていい。そのくだらぬ事ばかりがなかなか生きている。
蜻蛉の羽根と胴体を形づくる処のセルロイド風の物質は、セルロイドよりも味がデリケートに色彩と光沢は七宝細工の如く美しい。あの紅色の羽根が青空に透ける時、子供の私の心はうれしさに飛び上った。