Classici giapponesi con furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Leggi 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) di 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 240.656 caratteri · 478 schermate
五
「わははは。あの荒法師なかなかに胆が据っておるわ。いや、よいよい。ずんときびしく退屈払いが出来そうじゃ。ひと工夫致してつかわそうぞ」
五
引き揚げてのっそりと帰ろうとしたとき、それ見たことか小気味がいいわと言うように、嘲笑いながら院代玄長が消えていった同じその行学院の小暗い庭先から、隠れるようにつつうと走り出して来たのは、黒い小さな人の影です。しかも引き揚げようとしている退屈男の行く手に塞がると、不意に呼びかけました。
「もうし、あの、殿様、お願いでござります」
「なにッ」
同時にギラリ、退屈男の目が冴え渡りました。頭も丸い、僧衣も纏っているのに、まさしく今の、もうしあのと言った声音は女だったからです。
いや、声音ばかりではない。プーンと強く鼻を打ったものは、まぎれもなく若い女性の肌の匂いでした。その上に色がくっきり白い、夜目にもそれと分る程にくっきりと白いのです。のみならずその面ざしは、円頂僧衣の姿に変ってこそおれ、初い初いしさ、美しさ、朝程霧の道ではっきり記憶に刻んでおいたあの謎の娘そっくりでした。――刹那! 退屈男の鋭い言葉が飛んだのは言うまでもない。