Classici giapponesi con furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Leggi 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) di 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 240.656 caratteri · 478 schermate
二
と思われるような緞子造りの、ふっくらとした褥です。それから刀架に脇息――。
「その方なかなかに心利いた奴じゃな。小姓共のおらぬがちと玉に瑾じゃ。ふっくらいたして、なかなか坐り心地がよいわい」
気概五十四郡の主を呑むかのごとくに、どっかと座を占めると、何思ったかふいッと命じました。
「板を持てッ。看板に致すのじゃ。何ぞ一枚白木の板を持って参れッ」
程たたぬまにそこへ命じた白木の板が運ばれたのを見すますと、たっぷり筆に墨を含ませて書きも書いたり、奔馬空を行くがごとき達筆で、墨痕淋漓と自ら退屈男の書きしたためたのは実に次のごとき大文字です。
「直参旗本早乙女主水之介様御宿」
「ウワハハハ、わが文字ながらなかなかに見事よ喃。これならば陪臣共もひと泡吹こうぞ。遠慮は要らぬ。なるべくひと目にかかるような店先へ早う立てい」
おどろくかと思いのほかに謎の番頭は、にたりと意味ありげな微笑をのこすと、洒然としてかつぎ去りました。
二
しかし、来ないのです。
来たら退屈払いにひと泡吹かしてやろうと、朱緞子の大座布団にふっくらと陣取りながら今か今かと待っていたのに、どうしたことか宿改めの係り役人達は、待てど暮らせどそれらしい者の姿すらも見せないのです。