Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Leggi 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) di 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 240.656 caratteri · 478 schermate

Aozora Bunko

移すともなく目を移しながら、ふとそこにつながれている新兵衛乗馬の黒鹿毛にまなこを注ぐと、こはそも奇怪! ちらりと目についたものは、鎧の外に、べっとり流れ垂れている紛れなき生血です。

「ほほう。鉄扇をうけた位で、生血が垂れているとは少し奇怪じゃな」

勃然として大きな不審が湧き上がりましたので、うろたえ騒いでいる人々を押し分けると、構わずにずいと死骸の傍らへ近よりました。

と知って、町方役人共が、要らぬおせっかいとばかりに鋭く咎めました。

「用もない者が、誰じゃ誰じゃ! 行けッ。行けッ。あちらへ行かぬかッ」

見ただけでも分りそうなものなのに、悉く逆上しきっているのか、二度も三度も横柄に役人風を吹かしましたので、仕方なくあの傷痕を静かにふりむけると、微笑しながら言いました。

「わしじゃ、分らぬか」

「おッ。早乙女の御殿様でござりまするな。この者、御前の御身寄りでござりますか」

「身寄りでなくば、のぞいてはわるいか」

「と言うわけではござりませぬが、お役柄違いの方々が、御酔狂にお手出しなさいましても無駄かと存じますゆえ、御注意申しあげただけにござります」

素人が手出しするな、と言わぬばかりな冷笑を浴びせかけましたので、退屈男の一喝が下ったのは勿論の事です。