Classici giapponesi con furigana
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にっき
日記
宮本 百合子
Leggi 日記 (にっき) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 79.482 caratteri · 160 schermate
狭い道で、右側は疎な竹垣、竹垣の彼方に相当な距離をおいて三階建の大きな木造屋がある。門に白十字と書いた札が出て居る。なる程これは悪くない場所だと思った。呼吸器の患者がここに収容されて居るのだ。
坂の下り口まで行くと左は崖で、そこから今井さんの家の芝生の端とコスモスの濃い紅の花の色がまだ見えた。相当幅のある坂の下から島田に結った女の人がこっちへ登って来た。坂下はつき当りに家並があって道路は左右にわかれて居る。自分は考えて左をとった。狭いが、がやがやした通りで小売店が沢山ある。その道は丁字形により広い往来に通じてる。角にやっぱり三階の大きな木造家があって、往来に向って無数の小部屋が開かれて居る。手摺も廊下もなくいきなり夥しい部屋部屋が重り合って見える。そこには日がさして居る。
三階のてっぺんの開けっぱなしの一つの室から溢れるように白衣の大きな男がねそべって外を見下しながら斯う云って居る。
――もう少しで出られるさ。ここは廃兵院なのだ。往来の物音とこの沢山の窩のような部屋部屋に満ちた白衣の病人の生活する音とが自分をつつんだ。
大通りに出ると、さて右へ曲る。