Classici giapponesi con furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Leggi 春いくたび (はるいくたび) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 70.094 caratteri · 142 schermate
さし伸ばされた雪のような項にかかる後毛、唇を喰いしばって外向けた横顔の美しさ……いまの湛左衛門にとってこれ以上の肴は無かった。
「夢にまで見た梨花一枝、こう易々と手に入ろうとは思わなかった」
湛左はにやり娘へ一瞥くれながら、たばさんだ腰の短刀をぽんと叩いて、
「それもこの菊一文字の御利益よ、さすがに名刀の徳は争われぬ、今宵は宵節句でもあり三年の宿願も協い、吉瑞一時に到るというものだ、みんな愉快に思う存分やってくれ」
そう云ってかかと大笑した時である。広縁に面した障子がさっと明いて、――花片を散らしながら一枝の満開の桃が、湛左衛門の前へ風を切って飛んできた。
「その梨花一枝、こっちへもらうぞ――宵節句の祝いには桃をやる、不服はあるまい!」
叱呼しながら入って来た三樹八郎。――襷、汗止め、袴の股立をしっかりと取って、愛剣包光二尺八寸を右手に傲然と突立った。
貧に窮して自殺する命、銀之丞兄妹のために捨てるのは覚悟のうえだ。今日まで世に出る機会もなく、屈しに屈していた英気が、今こそ奔流のごとく切って放されたのだ。
「あ! 天王裏の素浪人だ」
門人の一人が叫んで、抜討ちに斬ってかかるやつを、ひっ外しておいて、