Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Leggi 春いくたび (はるいくたび) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 70.094 caratteri · 142 schermate
妹さえも敵の手へつき出した。そして侍大将に出世しようとしている。もうなにもかもおしまいだ。
――生きてはいられない。
そんな言葉が、頭のなかでうずのようにぐるぐるとまわる、若菜はほんとうにいくたびか舌をかみ切ろうとした。しかしそれはできなかった、母を思い妹の千浪を思うと、
――このままでは死ねない。
という気がする。
ではどうしたらよいのか、たとえ生きてここをぬけだすことができたとしても、大村へ帰って兄が裏切者だということを母に話すことができるだろうか、あんなに兄を信じている母は恐らく生きてはいまい、それくらいならここで死んでしまう方がいいのではないか、そうすればいくらかでも母の悲しみをのばすことができる。
とつおいつ、考えふけっていた若菜は、妙な物音を聞いてはっと我にかえった。
「……若菜どの、――若菜どの」
誰か人の呼ぶ声がする、そして、まもなくがちりと鍵のあくひくい音がした。
「若菜どの、どこにいますか」
「――どなたです?」
「早く、早くこっちへきてください」
若菜はすぐには立てなかった、しかしやがて誰か助けにきてくれたのだと気づいた、そしてからだじゅうの血がいちじに動きだすのを感じながら声のする方へはせよった。