Classici giapponesi con furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Leggi 春いくたび (はるいくたび) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 70.094 caratteri · 142 schermate
夏が来た。……風のない、ぎらぎらと煎りつくような日が続いた、あるときは雷鳴が山峡にはためき、電光と白雨とが高原の野を狂気のように叩きつけた。
香苗の家は信之助の清水家に次ぐ旧家であった。厚さ三尺もある土塀が、屋敷まわりの三方を取巻いていた。その中には母屋だの隠居所だの、廏だの下男たちの小屋だのが建っていたし、広い柿畑さえ取入れてあって、その柿畑のうしろはそのまま段登りに、深い松林で山へと続いていた。……そして秋になると、幾十疋もの野猿の群が、柿を盗みに屋敷の中へやって来た、その土地では猿を殺さない習慣なので、威しの空鉄砲で追い払うのだが、猿たちが盗みとった柿を片手に抱えて、けたたましく叫び交しながら逃げて行くさまは面白いみものだった。
けれどその年の秋に限って、野猿たちは鉄砲で威される心配がなかった、彼等は毎朝、思うさま柿を食べ、持てるだけ獲物を持って帰ることが出来た。……空鉄砲を射つことも、追い払うことも香苗が禁じたのである。
香苗は信之助のことを思ったのであった、彼が出て行ったところでは、日毎に鉄砲が火を吹いているであろう、刀や槍が光り飛んでいるに違いない、信之助はその弾丸をくぐり刃のなかに囲まれているのだ。