Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 167.285 caratteri · 330 schermate
石段を登りきったところで、新八は草むらの中へ身を隠した。内側から肋骨を、槌で叩きでもするように、心臓が荒く激しく動悸を打ち、喉が塞がり、息苦しさのために胸が裂けそうであった。
崖の下で呼子笛がするどく鳴り、人の叫び声が聞えた。捉まる、きっと捉まる、と新八は思った。枯れた草の葉が、彼の頬を刺した。彼はもっと草の茂みの中へもぐってゆき、地面へ低く跼んだ。自分の荒い呼吸や心臓の鼓動が、まるですぐそばにいる他人のもののように、はっきりと高く聞え、それが追手を呼びよせるかと思えた。崖下で「おーい」と呼ぶ声がした、「ここに石段がある、上はなんだ」とその声が云った。新八は息を詰め、地面へ手をついた。
「上は人の家です」と云うのが聞えた、「日本橋の雁屋信助という、海産物商の控え家で、登りきったところが裏木戸になっている筈です」
新八は手で地面をつかんだ。
枯草の根の地面は、霜で浮いていて、冷たくべっとりと、指にねばり付いた。空は明るみはじめ、どこかで小鳥の声がした。新八は口をあいて喘いだ、追手は石段を登って来るらしい。崖下にも人声がして、池之端のほうへ遠のいてゆき、石段を登って来る人のけはいと、草履の音が聞えた。