Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 167.285 caratteri · 330 schermate

Aozora Bunko

と一玄は続けた、「私が現に筆をとり、心血をそそいで描いた絵も、人には認められませんでした、とすれば、同じことです」

甲斐の額に皺がより、一玄はさらに、静かな口ぶりで云った。

「空想の絵はもちろん、現実にも、しょせん私は、人に理解されない絵を、描きつづけて来たわけです、――お座興に聞いて頂きたかったのは、この話しでございます」

そして彼は、酒を飲んだ。

「人は同じようなものだ」と甲斐が穏やかに云った、「私は少年のころ、古い歌物語で、こういう歌を読んだ、――おもうこといわでぞただにやみぬべき我とひとしき人しなければ」

一玄は口の中でそっと、その歌を繰り返してから、在五中将でございますな、と云った。甲斐は、さよう、業平だと頷いた。

「この世には、おのれと同じ人間はいない、おまえの場合とは違うが、人はみな、誰にも理解されない絵を、心のなかに持っているのではないか」

「貴方さまもですか」と一玄が訊き返した、「船岡の館主である、原田の殿もですか」

甲斐は口をつぐみ、暫くその老盲人の顔を見まもった。もっとなにか云いたげにみえた甲斐の顔が、いつものなごやかな冷静さをとり戻した。