Classici giapponesi con furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Leggi 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) di 橘 外男 (たちばなそとお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 154.788 caratteri · 299 schermate
そして七時頃には顔も剃ればいつものように朝のシャワーも浴び、サッパリと身仕度を整えて階下の食堂へも出て来れば、また朝の食事とても不断と何の変りもなく旨く摂ることができたのであったが、麪包を割きながら眼を走らせた新聞には、まだただの一行も昨夜の事件は載っていなかった。よしんば出ていたところで私は別に逃げ隠れしようと考えているのではない。妻を殺すまで今日たった一日一晩だけの自由さえあれば、後はもういかなる運命が襲い蒐って来ようとも厭わないのであったから、そう怯々することもないのであったが、それでも昨夜の記事が出ていないということはさすがに私の心を吻とさせた。
やがて私は嫩葉の森に囲繞せられたヴェランダへ出て、食後の煙草を楽しんだり、白菖の生えた池の畔を逍遥いながら、籐の寝椅子に凭れてうとうとと昨夜の足りぬ眠りを補ったり、他所眼にはいつもと何の変りもない静かな別荘の昼前の時間を過ごしていたのであったが、さすがにいくら気持が落ち付いていたとはいえ人一人殺してしまった今となっては、たとえ時間潰しでも本だけはもう眼を通す気にもなれなかった。仕方がないから葡萄の葉が陽を遮っている四阿の中で時間潰し旁々、心残りのないように遺言状を一通認めておくことにしたのであった。