Classici giapponesi con furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Leggi 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) di 橘 外男 (たちばなそとお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 154.788 caratteri · 299 schermate
かくして私たちの家は当分悲哀を中心としての生活をしていたのであったが、悲哀が来てから二カ月余りの日はいつかもう夢のように過ぎ去っていた。犬そのものに特別の愛情でも感じていたのならばともかく、この程度の物珍しさではやがてその珍しさの時機が過ぎてしまえば、自然と忘れがちになってくるものであった。
いわんや妻は移り気な性分であったし、来年の品評会までにはまだ八、九カ月ばかりの間もあったし……しかも妻の一日の生活は必ずしも悲哀だけを対象としたものではなかった。今売り出しのブランカ・ルーナというアルゼンチン・タンゴの名手の後援もしてやらなければならず、音楽会へも招かれねばならず、ロデス夫人の凝っている降霊会へも出席しなければならず、また家で友達たちを招待して晩餐会も催さねばならず、観劇……夜会……宝石……そして衣装店へ! この頃では悲哀のこともあまり口に上らなくなっていたのであった。が、悲哀の方でもまた、もう十年も前からこの家に住んでいるような顔をして、ウソウソと邸の中や庭を這い廻って、いつの間にか私の家の欠くべからざる家族の一員になり切ってしまったかのような工合であった。