Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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たなださいばんちょうのかいし

橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇

橘 外男

Leggi 橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇 (たなださいばんちょうのかいし) di 橘 外男 (たちばなそとお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.181 caratteri · 219 schermate

Aozora Bunko

五

陽が雲に遮られて、湖水の上が薄らと、翳ろってきました。が、その瞬間に、私には今日まで二日間の疑問が、淡雪のように消え去るのを覚えました。

なぜこの人たちには母親もなくて、そして明るい美しい立派な人たちでありながら、なぜこんな淋しい山奥の無人の高原なぞに、親子三人だけで暮してるのだろうか? という、今日までの疑問のすべてが腑に落ちても、何としても私には、彼女を慰める言葉が見出せなくて、じっと、うなだれていたのです。

五

もちろん、彼女は暗い面持で、ボソボソと人の哀れみなぞを惹くような調子で、身の上語りをしていたのではありません。また日本政府や憲兵隊の取り扱いぶりを、非難しているのでもありません。時々思い出して涙ぐんではいましたが、大体にきわめて明朗に、淡々として、好奇心で私の問うに任せて、こんな話をしてくれたに過ぎないのです。

そしてまた、本国の財産が没収されようと、長崎の帰る家はなくなろうとも、彼女たちは決して貧しいという身の上ではありません。昔の境遇に較べれば、烈しい転変を見せてるとはいえ、まだこれだけの厖大な地所を持って、立派な家があって、庭園があって……たとえこの湖や、地所の一部農場の一つも手離したとしても、おそらく普通の人には想像も及ばぬ、莫大な金が入ってくるに違いありますまい。