Classici giapponesi con furigana
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たなださいばんちょうのかいし
橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇
橘 外男
Leggi 橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇 (たなださいばんちょうのかいし) di 橘 外男 (たちばなそとお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.181 caratteri · 219 schermate
そうした幼時の思い出の数々を私は持っています。が、村の小学校の四年生の時、父が東京の本省へ転勤になったために、この草深い田舎の生活を棄てて私は東京へ出て来ました。その後二年ばかりもたつと私はさらに父の転任につれて長野へ行き、前橋へ行き、浦和へ行き、この浦和で祖母は七十六歳の高齢で世を去ってしまいました。もちろん大村を離れて以来、口へ出してどうのこうのと、棚田のうわさを言ってたわけではありません。が、恐怖は身に沁みていたとみえて、大村を立ち去ったことを――というよりも上小路の家を立ち去ったことを、しみじみ喜んでいる風に見えました。
「そんなことをいうと、お前はまたお祖母さんをバカにするかもしれないがね。あの時分は夜が明けても、ほんとうに何だか鬱陶しい厭な気持がしてね、気のせいかもしれないけれど誰の顔を見ても何だかこう……気のめいりそうな憑きものでもしたような顔をして朝から日暮れ方みたいな気がしたよ」
と心から吻っとしたように、祖母はザブリザブリと湯槽の中で顔を洗いながら念仏を唱えています。
さて、私が絶えて久しい棚田の晃一郎氏に逢ったのは、それから何年くらいもたった時分だったでしょうか? その頃には、父も退隠して、最後の任地であった気候の穏やかな静岡の郊外で、悠々と余生を送っていました。