Classici giapponesi con furigana
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せいあどうきだん
青蛙堂鬼談
岡本 綺堂
Leggi 青蛙堂鬼談 (せいあどうきだん) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 121.438 caratteri · 238 schermate
彼は元来無口の男らしく、毎日この渡し場に立ち暮らしていながら、顔は見えずとも声だけはもう聞き慣れているはずの船頭どもに対しても、かつて馴れなれしい詞を出したことはなかった。こちらから何か話しかけても、彼は黙って笑うかうなずくかで、なるべく他人との応答を避けているようにもみえるので、船頭どもも後には馴れてしまって、彼に向って声をかける者もない。彼も結局それを仕合せとしているらしく、毎日ただひとりで寂しくたたずんでいるのであった。
いったい彼はどこに住んで、どういう生活をしているのかそれも判らない。どこから出て来て、どこへ帰るのか、わざわざそのあとを付けて行った者もないので、誰にもよく判らなかった。ここの渡しは明け六つに始まって、ゆう七つに終る。彼はそのあいだここに立ち暮らして、渡しの止まるのを合図にどこへか消えるように立去ってしまうのである。朝から晩までこうしていても、別に弁当の用意をして来るらしくもみえない。渡し小屋に寝起きをしている平助という爺さんが余りに気の毒に思って、あるとき大きい握り飯を二つこしらえてやると、その時ばかりは彼も大層よろこんでその一つを旨そうに食った。