Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate
お十夜の血は狂いに狂った。意馬心猿――という相である。
浅ましや孫兵衛。その廊下のつきあたりまで、お綱を追いつめてきたかと思うと、いきなり、跳びついてゆこうとした。
飢えた狼が、鶏へかかったように。
と――かれの血眼を、キラリとさえぎったものがある。お綱が、死をきわめて、待ちかまえていた匕首の色! 寄らば、という気ぐみが、その切ッ尖に張りつめていた。
はっと、お十夜は気をすくめた。
つり上がったお綱の眼と、月形の刃が、こんどはあべこべに、お十夜のほうへ、一、二寸ずつ迫ってくる。
前にもいったように、お綱のうしろは廊下の行き詰りで、左右は、居間と書院の檜戸だ。逃げようとて逃げられる場所ではない。お綱の身は、今こそ、お十夜の爪にかきむしられるか、その匕首をもぎとられて、かれに心臓を刺されるか、途は二つを出ないのである。
死ぬのがましか。どうあろうと、助かるのがまだしもか。誰が! こんな男にゆるすものか。お綱はそう思うほど強くなった。
けれど孫兵衛は、ひとかどの男さえ、歯の立たない丹石流の達者だ。なんで、女の匕首に、身を掠らせるような隙があろう。獣情と殺気に、らんらんと燃える眼ざしをして、ジリジリ……となおも彼女の手元へよってきた。