Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate
かれは思いきって足を止めた。
「もう家の側まで来たから、姉ちゃんはここでお別れするよ。ね、またそのうちに、お屋敷のご奉公がすんだら、お前たちの側へ帰ってたくさん可愛がって上げるからね……」
こういって、帯の間からつまみ出した小判を四、五枚、お三輪の手へ握らせてやったが、小判はチラチラと足元へこぼれ、お三輪も乙吉も、目に涙をいっぱいためて、急に悲しい顔をした。
「さっきも話した通り、お屋敷奉公をしている身だから、この姉ちゃんは、家へ泊ってゆかれない体なんだよ。ネ、いい子だから聞きわけて、今日はここで別れておくれ」
「え……」
「分ったかい。そのうちに、きっとお前たちを幸福にして上げるからね。廓へ売られた姉ちゃんも、今に私が身うけをして、家へ戻れるようにする。だから、そんなに泣かないで……」
お綱にだましすかされて、やっとうなずいたお三輪と乙吉は、ぜひなくトボトボと歩きだした――別れともない泣き顔で。
その影が、おはぐろ溝のドンドン橋を左に越えて、九尺二間の軒と軒とが挟み合っている孔雀長屋の路次へションボリ消える。
細い月が空にあった。
廓は人出の潮時である。