Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate
「あの墨屋敷が焼けた晩に?」
「そうじゃ、しかし、そちは知るまい。気を失っていた筈だからの。ちょうどあの夜、この鴻山は所用あって、飯田町から戻る途中であった。火に行く先をふさがれて、ぜひなく駕を休めていると、そこへそちと、もう一人、由ありげな女子とが、気を失って引きずられてきた」
「あ! その、もう一人の女子こそ、お千絵様でありました!」と、お綱は心で叫んだが、口には出ずに、ただ鴻山の言葉に気をとられていた。
「しかし、その晩には、そちを助ける気はないので、もう一人の女子だけを駕に乗せて、はるか、四谷の台を迂回して、焔の中から逃れてきたのじゃ。ところが、後になって後悔いたした。なぜ、その時、そちをも一緒に連れてこなかったかと……」
アア、さてはお千絵様の身は、あの時、無事に鴻山の手に救われて、この屋敷の内に守られているのかと、お綱は初めてうなずいた。
が、どうして、常木鴻山がこの屋敷にいて、そして、かくも詳しく、何かを知っているのであろうか。
それにも、径路がなければならぬ。
去年の夏――、蜂須賀家の原士に斬りこまれて、住吉村を去ったかれは、あれから幾月かを、紀伊の山奥に暮らしていた。