Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate
と――樅や楓の植込みを縫って飛び石伝いにカラカラと、庭下駄の音がそこへ急いで行く。すぐ後から二人の影、一人は由造、一人は今早駕を下りたばかりの唐草銀五郎である。
「多市さん、多市さん」
先に立ったお米、濡れ縁から呼びかけて中へ上がった。二間造りの別棟で、魚をかこっておく生洲の水がめぐっており、板場の雑音は近いが、屋根から庭木へ掛けてある川狩使いの網の目に、色町の中とは見えぬ静かな宵の月が一輪。
「さ、親分様、どうぞこちらへ」
「ご免なすッて下さい」
脇差を取り、裾を払って、銀五郎もズッと入った。油薬の香が蒸れてプーンと鼻を衝つ。
ここまで来る間に、使いの由造から、すッかり事情は聞いていたが、見れば、余りに変り果てた乾分多市の姿――銀五郎そこへ足を入れた途端に、指の尖で目がしらの露をおさえた。
幸か不幸か、待乳の多市は、お十夜の妖刀に二ヵ所の傷を負わされながら、川長の者に救われてここに療治をうけ、今なお気息喘々と苦患の枕に昏睡している。
「多市さん!」お米は軽く揺すぶッて、
「寝ているの、苦しいの? ――お前さんがうわごとにまでいっていた唐草親分が、枕元へ来ていますよ、え、お分りかえ」