Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate
そこにサメザメと泣いている女は、井の字絣の着物をきていた。
泣いている顔の袖を離して、林の細道を、一、二間ウロウロしていたかと思うと、女は、ものの怪に憑かれたように、フワ――と赤いしごきを木の枝へ投げかけた。
「あっ!」
お綱は夢中になって駆けた。
蔓草に足をとられて、一、二度倒れかかったが、あぶないところで間に合った。
今にも、梢にしごきを投げかけて、幽寂な林の中に首を縊ろうとする女。その後ろから、しッかりと抱きとめたのである。
「めったなことをするもんじゃない! めったなことをおしでない!」
お綱は声を絞って、井の字絣の娘を抱き戻したまま、よろよろと熊笹の中へ坐ってしまった。
途端に、抱き倒された娘は、声をあげて泣き伏した。泣いても泣いても、涙の尽きぬように慟哭した。それもやがて声がかれると、背なかに波を打って苦しげな嗚咽となる。
「まア、あぶないところだった」お綱はほッとしたように、しげしげと娘の容姿を見なおして、
「アアびっくりした。みれば、お年もまだ若いらしいのに、一体、どうしたのですえお前さんは。え、え? 話せることなら話してごらん」
「いいえ、いいえ、別にわけも何にもないのでございます……どうぞ、私はこのままに泣かしておいて下さいまし」