Classici giapponesi con furigana
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
Leggi かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 91.006 caratteri · 182 schermate
「あの猿は、船のですか、それとも、誰か飼主があるんですか」
飼主は一等船客の外人だった。彼は、日本婦人の狂噪を軽蔑しながら、そんな大事な物を船室の外へ置いたのが悪い。こっちに責任はないという意味を一息に周囲へ向ってしゃべった。
「猿を買います! 船長、猿の代価を払いますから、短銃で射殺してください」
飼主は、やや日本語がわかるとみえて、ひろい肩幅を婦人の前へ押して来た。
「いけません、猿、売りません」
「いいえ、売ってください」
「飼主、わたくし愛している、動物の生命を売る! 否、否」
飼主の顔も猿みたいになった。
「あなた、会社の職長さん?」
「はっ」と、職長はいらいらした拳を腰につッかって、
「――高瀬さんの奥さまでございましたな」
「はい、弁天通りの高瀬でございます。主人の代理で、船へ、お贈り物を持って来たところですの」
「飛んだご災難ですな」
「何とか、会社として飼主へかけ合って下さいませんでしょうか」
「かけ合ってみましょう」
船底作業が終ったので、午後から船渠に水を張って三時四十分の満潮期には、キッカリ、船を出さなければならない。同時に、次の入渠船の約束もあるので、職長としては、なおさら、気が気ではなかった。