Classici giapponesi con furigana
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ロザリオのくさり
ロザリオの鎖
永井 隆
Leggi ロザリオの鎖 (ロザリオのくさり) di 永井 隆 (ながいたかし) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 107.351 caratteri · 213 schermate
しかもその責任は一家のだれにもなかった。神官だっておそらく彼の一生は朝な朝な着る白いひたたれのごとく清らかに、罪けがれは常に払い給い潔め給うて来たにちがいないし、ビルマへ行った息子にしても戦車にぶっつかって死んだというから正直者だったろう。こんな善意の人々の一家をこんなむごい目に合わせたものはいったい何か?
夫は死に、子の骨は還らず、夫人は老いの身を荒れはててゆく社務所の片隅にちぢこまってこれから先幾年、夫をだまし、息子をだまし、日本をだましたあの八百万の神々を恨み続けのろい続けるであろう。だが八百万の神々は実在ではなく、元来架空の想像神である。彼女が恨まねばならぬ相手は真理を求めようとする勇気に欠けていた日本人自体である。──私はさっき夫人の座っていた腰掛けを見た。それはまるでどうの鳴らなくなった温泉神社みたいにひっそりとその場にあった。その腰掛けの前のリノリウムに白い物が落ちている。拾い上げてみたら夫人のハンカチであった。
感情を表に現わさず、肩ひとつ震わさず、じっとこらえている日本の女の強さは軽い反感を起こさしたほどだったが、やっぱり女は女、手からハンカチのぬけ落ちるのも気づかぬまでに彼女の心は泣き狂っていたのである。