Classici giapponesi con furigana
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さんがいばんれいとう
三界万霊塔
久生 十蘭
Leggi 三界万霊塔 (さんがいばんれいとう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.716 caratteri · 39 schermate
五
山崎のほうはむかしの夢が忘れられず、また一屯千四百ドル相場にかえることを信じて貝床にしがみついていたが、日米開戦後、濠洲軍に捕まってツラギで苦役をしていたらしいが、終戦後、対馬の長男といっしょにラバウルのキャンプへ送られてきて、炊事場の使い番のようなことをしていたと、早く帰った復員者から聞いた。
五
年はじめは春のようだったが、三月に入ると寒い日がつづき、春とは暦だけのことで、咲きかけた庭の海芋の上に出戻りの冬がぐずついていた。
深尾は葉巻きの煙を唇の端でころがしては吹き、樹牆に沿って築山のほうへ歩きながら、ふと、
「そういえば濠洲はいま秋だ」
と独り言をもらし、もう何年も思いだしたこともない濠洲のことがどうして頭にうかんだのだろうと、足をとめて考えだした。
メルボーンの気候の変調は有名なもので、三月は濠洲の秋だが、一日のうちに夏と冬がある。霜がおり、寒いなと思って庭を見ると、芙蓉や海芋が咲き乱れ、正午になると七十四度ぐらいまで温度があがる。妙な寒さと海芋の花の色が連想を誘ったのだろう。そういえば、濠洲ではよく気候不順にやられ、ちょうどこのごろのような無力感に襲われたことがあった。