Classici giapponesi con furigana
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「もくせい」ごうのなぞ
中谷宇吉郎集 第六巻
中谷 宇吉郎
Leggi 中谷宇吉郎集 第六巻 (「もくせい」ごうのなぞ) di 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.784 caratteri · 269 schermate
中間子の最初の着想に到達するまでには、それで湯川さんは、骨身をけずる苦心をしたのである。現在の日本の大学では、研究室というものが、ほんとうの研究室にはなっていない。それは一種の事務室である。中間子のような全く新しい思想に、じっと思いを潜めることは、大学では出来ない。夜更けた六甲のあの家と、あの静寂な環境とが、湯川さんの仕事の母胎になったのは、当然のことである。
更けて行く六甲の家で、湯川さんは、「僕はどうも床の中で考える癖がありましてね」という話をし出した。枕もとにノートと鉛筆とを置いて、床につく。そして静かに原子核の内部の秘密に沈潜する。時々ひらりと啓示があったような気がすることがある。それをすぐノートに書きつける。ああそうかと思い、これは巧いと思うようなことが何度もあったそうである。しかし翌日眼をさまして、そのノートを見直してみると、全くの出鱈目で、がっかりしてしまう。
こういう生活は、決して健康にいいものではない。また公務員法にも抵触する。よくねそびれて困ることがあったらしい。そういう時には、普段は全然気にならない遠くの蛙の声が、妙に耳について、ますます寝つかれなくて困ったそうである。