Classici giapponesi con furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Leggi 丹下左膳 (たんげさぜん) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 340.187 caratteri · 666 schermate
例によって貧乏徳利を片手に、泰軒は歩調をゆるめて振りかえる。
お艶は立ちどまった。
「先生!」
「なんじゃな?」
答えながら、かぐわしい朝の日光のなかに初めて、お艶のすがたを見た泰軒居士、一歩さがってその全身を見あげ見おろし、今さらのように驚いている。
そこに、泰軒の眼に映っているのは、あさくさ瓦町の陋屋にぐるぐる巻きでつっかぶっていたお艶ではなく江戸でも粋と意気の本場、辰巳の里は櫓下の夢八姐さん……夜の室内で見た時よりは一段と立ちまさって、すっきりした項から肩の線、白い顔にパッチリと整った眼鼻立ち、なるほど、よく見ればお艶には相違ないが、髪かたちから化粧、衣装着つけや身のこなしまで、彼女はもう五分の隙もない深川羽織衆になりすまして、これでは、識った者で往来ですれ違ってもとても気がつくまいと思われるほど。
夜来のおどろきと気づかいに疲れたのか――後れ毛が二、三本、ほの蒼い頬に垂れかかって、紅の褪せたくちびるも、後朝のわかれを思わせてなまめかしい。
大きな眼が、泰軒の凝視を受けて遣り場もなく、こころもちうるんでいた。
一雨ごとのあたたかさ。
その雨後のしずくに耐え得で悩む木蘭の花。