Classici giapponesi con furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Leggi 丹下左膳 (たんげさぜん) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 340.187 caratteri · 666 schermate
隻腕の身の片思い。
恋慕の糸のもつれは利刀乾雲でも断ち切れなかった。
夢に提灯をさげて築山の裾をゆく弥生がうかぶ。ううむ! と左膳が寝返りをうった時、やにわに! 紙を貼った戸の節穴に人影がさして、
「左膳さま――丹下の殿様!」
と呼ぶ与吉の声に、ぱッと枕頭の乾雲丸をつかんではね起きた左膳、板戸を引くと庭一ぱいの雑草に日光が踊って、さわやかな風が寝巻の裾をなぶる。
与吉のしらせを聞いた左膳は、やにのたまった一眼を見ひらいて、打ッ! と乾雲の鍔を鳴らした。
「なに、源十が見張っておると? だが、夜の仕事だなこりゃあ――貴様、いまのうちに駈けずりまわって、土生仙之助をはじめ十五、六人連中を狩り集めてこい」
きりきり舞いをした与吉は、糸の切れた奴凧みたいにそのまま裏門からすっ飛んでゆく。
闇黒に水のにおいが拡がっている――。
月のない夜は、まだ宵ながらひっそりと静まって、石垣の根を洗う河音がそうそうとあたりを占めていた。
あさくらお米蔵の裏手。
一番から八番まで、舟入りの掘割が櫛の歯のようにいりこんでいる岸に、お江戸名物の名も嬉しい首尾の松が思い合った影をまじえて、誰のとも知らぬ小舟が二、三舫ってあった。