Classici giapponesi con furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Leggi 五瓣の椿 (ごべんのつばき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.721 caratteri · 296 schermate
父がそう云いだしたらきかないことは、よくわかっていたからである。部屋へ戻って、寝衣に着替え、もういちど火鉢の埋み火をみてから、夜具の中へはいり、読みかけの「松代物語」というよみ本をひろげた。信濃のくにの松代という城下町に生れた姉妹が、じつの母親を捜すために諸国をまわりながら、いろいろと辛い苦しいめにあったり、悲しいおもいをしたりする話で、もう二度も読み、筋は暗記しているくらいだが、繰返し読んでもおしのは飽きなかった。――だがその夜は、いくらも、よまないうちに眠ってしまったらしい。呼び起こされて眼をさますと、徳次郎がまっ蒼な顔をして、「旦那が」と云いながら、店のほうを指さしていた。徳次郎の顔の相が変っているのを見て、おしのははっきり眼がさめ、起きあがって半纒をひっかけた。
父は座蒲団を並べた上に寝ていたが、喀血をしたのだろう、口のまわり、着物の衿、そして畳の上まで血が飛び散ってい、それを店の者たちが拭き取っているところだった。
「騒ぐな」と喜兵衛は眼をつむったまま云った、「薬はいらない、ぬるま湯に塩を入れて来てくれ、おしのを起こすな」
喀血は初めてではないが、そんなに多量に吐いたことはなかった。