Classici giapponesi con furigana
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えせものがたり
似而非物語
山本 周五郎
Leggi 似而非物語 (えせものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 31.817 caratteri · 64 schermate
四之木は感動に溢れる声で云った。
「阿の間を截る一拶の気合、まさしく奥義の御伝授と拝察つかまつりました、御流儀の秘伝まさに会得いたしてござります、かたじけのう……」
ございますと云うつもりだったらしいが、こみあげてくる嗚咽のためにあとは続かなかった。彼はよろこびと深い感謝とで、両手で地面にかじりついて泣くのであった。
――どうしたこんだ、これは。と杢助は心のなかで思った。おらあただくしゃみをしただけだによ。それがいってえどうしたっつうだ。
四之木四郎は秘伝を会得した。云うまでもない、彼は欣々と草庵を去っていった。
――こらあ油断も隙もなんねえ。
杢助は考えた。かれらはなにをきっかけに「会得」するかわからない、これでは不用意に話しもできないし、うっかり咳をすることもできない。こう考えて、今後は用心をすることにした。にも拘らず、悪い事は重なるというものかどうか、それから僅か数日のちに、またしても同様なことが起こった。例のくしゃみをしたときに鼻風邪をひいたとみえ、杢助はずっと水洟に悩まされていた。ばからしくなるほどひどい水洟で、休みなしにかんでいなければならない、折から横になって、一之木太郎に腰を揉ませていた。